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 ジョン・クリーズと「ザ・シークレット・ポリスマンズ」

■ 背  景

2002年2月にバップから発売されたDVD7枚組ボックスセット「モンティ・パイソン&ザ・シークレット・ポリスマンズ」は、1976年から現在まで9回にわたり行われているアムネスティ・インターナショナル主催のコメディ・チャリティ・イベントの第8回(1991年)までの記録です。アムネスティの「良心の囚人(Prisoners Of Conscience)」キャンペーンと言論の自由に賛同を表明し、活動資金の寄付をつのる目的のイベントなので、出演するコメディアンやミュージシャンはすべてボランティアで参加しています。また、アムネスティの趣旨の宣伝を兼ねるという性格から、この公演の記録は舞台だけではなくテレビ・ビデオ・映画と様々なメディアを通じ積極的に公開されています。そして、第8回までの15年の間、このイベントにおいてかげひなたでの立役者であったのは実はジョン・クリーズであり、アムネスティ・インターナショナルによるコメディのイベントというユニークな試みの成功に一役買っていました。

各回のイベントが行われた年とオリジナルタイトルは次のとおりです。青字は、TV・劇場公開時につけられた異なるタイトルです。「シークレット・ポリスマン」という単語の初出は79年の第3回目であり、またその後も通しで使われていたわけではないので、英国ではこのイベントは「The Amnesty Galas」と呼ばれることが多いようです。

1  1976 A Poke In The Eye (With A Sharp Stick) / Pleasure at Her Majesty's
2  1977 An Evening Without Sir Bernard Miles / The Mermaid Frolics
3  1979 The Secret Policeman's Ball
4  1981 The Secret Policeman's Other Ball
5  1987 The Secret Policeman's Third Ball
6  1989 The Secret Policeman's Biggest Ball
7  1991 The Famous Compere's Police Dog Bites Back / Barf Bites Back
8  1991 Amnesty International's Big 30
9  2001 We Know Where You Live )

第3回のThe Secret Policeman's Ballの際、アムネスティはジョンに正式に舞台総監督を依頼し、以後のイベントではジョン・クリーズの名前が前面に出てくるようになりました。これは、このイベントに誰か看板になる名前が欲しかったアムネスティ側が、当時「フォルティ・タワーズ」などの成功で注目を集めていたジョンに白羽の矢を立てたというのが理由のようです。ジョンはそのまま第8回まで総指揮を勤めあげました。したがって初回から第8回まで通しで出演しているのは全出演者中ジョンひとりです。(第4回は助監督、第6回はアブ・ファブのジェニファー・サンダースとの共監督です。また第8回のみ舞台ではなくITVのスタジオ内で行われ、ジョンは事前の録画により出演しています。)

A Poke In The Eye ポスター初回は60年代からのキャリアを持つコメディアンの同窓会的要素が濃く現われており、ビヨンド・ザ・フリンジ連、TW3のジョン・バードとジョン・フォーチュン、そしてテリー・ギリアム、キャロル・クリーブランド、ニール・イネスを含む(しかしエリック・アイドルを除く)モンティ・パイソンのメンバーが参加しています。しかしそれ以降はパイソンズからの参加者は減り、ジョン以外はマイケル・ペイリン、テリー・ジョーンズ、グレアム・チャップマンが交互に出演するのみにとどまっています。また第3回以降、当時台頭してきていた若いコメディアンやミュージシャンが出演者に加わり始めます。例えば当時BBCのNot The 9 O'Clock Newsで人気を確立していたローワン・アトキンソンは、79年のある日かねてから大ファンであったジョンから直接出演依頼の電話を受け、飛び上がって喜んだそうです。

87年の第5回 (Third Ball)では、BBCの「コメディ版ライブ・エイド」コミック・リリーフの影響を受けてかアメリカ人のコメディアンやミュージシャンもまじえ出演者の人数が増え、初期の英国コメディ的にコアな雰囲気は若干薄れます。しかし、2年後の第6回(Biggest Ball)ではユニバーシティ・レビュー時代のフォーマットに戻し、これはもともとコメディのイベントであるということを意識的に強調しようとしたようです。

2001年の第9回に総監督の座がエディ・イザードに引きつがれるまで、アムネスティ・ガーラはジョン・クリーズのイベントであるというイメージが一般には強く残っていました。その現われとして、第9回のイベント開催と監督交代が決まったとき、例えば英オブザーヴァー紙はエンタテイメント欄を大きく割いてエディとジョンのインタビュー記事を掲載しています*。そしてイザード指揮下に入りタイトルも一新した第9回のWe Know Where You Liveでは、エディ、ハリー・エンフィールド、ヴィック・リーヴス、そしてアラン・リックマンにより、トリビュートとして「4人のヨークシャー男」が演じられています。4人がステージに現われヴィックが最初の台詞をしゃべって観客が何が始まったか理解した瞬間、大きな歓声がわきあがります**

BBCのコミック・リリーフが次第に歌・パロディ・ダンスなどなんでもありの、またTVのネットワークを使った視聴者参加型の長時間続く騒がしいイベントになりつつあるのに比べ(コメディ版の24時間TVだと思って頂ければ一番近い)、アムネスティ・ガーラは現在でもステージ・レビューのフォーマットを守っています。あたかも、ジョン・クリーズがそのキャリアの初期からしばしば主張している「笑いに乗せると同じメッセージでもより強く伝えることができる」というテーマを真摯に追求しているかのようです。

   



*   ガーディアン紙のアーカイヴで読めます。(オブザーヴァーはガーディアンの日曜版です。)
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 このショウのビデオ・DVDはアマゾンで購入可。英版仕様ですが、ご興味のある方はどうぞ。


参考文献など
アムネスティ・インターナショナルUK
We Know Where We Live
Bruce Dessau: Rowan Atkinson: Orion (London): 1999
Mark Lewishon: Radio Times Guide To TV Comedy: BBC Worldwide (London): 1998
Robert Ross: Monty Python Encyclopedia: B.T. Batsford (London): 1997
Roger Wilmut: From Fringe To Flying Circus: Celebrating A Unique Generation of Comedy 1960-1980: Methuen (London) 1980


 Last updated: 14 Feb 2002