TFJC | Cambridge Footlights

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CAMBRIDGE CIRCUS: A CLUMP OF PLINTHS :  ケンブリッジ・フットライツ公演 (1963)

 

検事バートレット          ジョン・クリーズ
判事  デイヴィッド・ハッチ
弁護士マルトラヴァー  クリス・スチュアート=クラーク
アーノルド・フィッチ  トニー・バファリー (後にグレアム・チャップマン)
パーシー・モーラー&第一の廷吏  ティム・ブルック=テイラー
シドニー・ボトル&第二の廷吏    ビル・オディ
   

脚本 ジョン・クリーズ

 



満員の法廷。廷吏が入ってきて傍聴席に向き直る。

廷吏 全員起立!

人々立ち上がる。判事が入廷し着席する。

廷吏 全員着席! 被告入廷!

第二の廷吏が入廷し叫ぶ。

第二の廷吏 被告入廷! 被告入廷!

被告のアーノルド・フィッチが不安げに入ってくる。

書記官 あなたはアーノルド・フィッチ氏ですね?

フィッチ ま、ま、まったくそのとおりです。

書記官 あなたは西暦1963年7月14日に、故意かつ不法に、凶悪な動機にもとづき、小人シドニー・ボトル氏を襲撃した罪状に問われここに召喚されています。被告人は、「有罪」または「無罪」のいずれを答弁しますか?

フィッチ ま、ま、まったく無罪です。

検事バートレットが立ち上がる。

バートレット 判事閣下、本件に関してはわが学友マルトラヴァー君が法のもとに弁護し、わたしは金のもとに訴追いたします。さて本件は極めて明白な犯罪であります。検事団が証すべき事実は、今閣下の目の前にいる、虚言癖の堕落したこの唾棄すべき悪党が…

フィッチあたりを見回す。

バートレット …7月14日夜に極めて凶悪かつおぞましい計画を企てつつ自宅に戻り、配偶者と会話を交わした後、所有するダチョウを散水缶を用いて故意に襲撃したことであります。

判事 何を用いてだって?

バートレット 散水缶です、閣下。鉄製の巨大な容器で内部にはシリンダーが、外部には液体を排出する管が装着されており、主に労働者階級の人間により地表の土に水分を与えるために使用される用具です。

判事 了解した、ありがとうバートレット君。

バートレット ご理解頂きありがとうございます。続けてよろしいでしょうか。さて驚愕せしそのダチョウでありますが…

判事 その何だって?

バートレット ダチョウです、閣下。ダチョウとは、羽毛をまとう飛翔不能の巨大な鳥で、主にアフリカに生息し、その走行速度と有用な羽根によってよく知られている鳥類です。

判事 ああ、カッコウの一種か。

バートレット 違います、閣下。とにかく、そのダチョウは驚愕し窓から飛翔しようと試みたところ、通行中のアイスクリームの屋台に墜落し…

判事 何の屋台だって?

バートレット アイスクリームです、閣下。アイスクリームとは、甘味と香料とを添加され冷凍されたクリームの人工的な代用品であり、その起源はモヒカン族の戦闘時の塹壕での食料として発明されたものです。

判事 素晴らしい、素晴らしい。

バートレット ありがとうございます、閣下。ではそろそろ本当に続けてよろしいでしょうか。…通行中のアイスクリームの屋台に墜落したところ、その衝撃により生じたアイスクリームの塊が…

判事 生じた何だって?

バートレット (叫ぶ)アイスのカタマリぃっ!!!

人々飛び上がる。

バートレット 大変失礼しました。ただの咳払いです。…生じたアイスクリームの、あー、飛沫が、原告である小人シドニー・ボトル氏の頭上に落下し、ボトル氏の新品のスーツに壊滅的打撃を与えたのです。閣下、これはきわめて明白な犯罪であると我々一同賛同できるでしょう。本件には、かつての『プリッチャード対東ハリファックス魚骨糊製造社』の判例が適用されるものと主張致します。

判事 それはサクランボ飲料の瓶にナメクジが入っていた件だったかな?

バートレット 違います閣下、人間砲弾と防御ネットに関する裁判です。

判事 ああ、あのカッコウの事件か。

バートレット 違いますっ。

弁護士マルトラヴァーが立ち上がる。

弁護士 申し上げます。判事閣下はおそらく、ペットのカンガルーを襲撃中のディンゴーに向かいまさにブーメランを投擲せんとしたあるアボリジニが、カッコウの一撃により注意力を散逸し、その結果誤ってブーメランが被告の通行中の友人を直撃したという『ホワイト対フィリップス』の件をお話しになっているものと想像申し上げます。オーストラリア奥地での裁判であります。

判事 ああそうだった、オーストラリアでの判例なら本件には適用されないな。

弁護士 そのとおりです。

バートレット おっしゃるとおりです、閣下。もし続けてよろしいのでしたら、私は最初の検察官側証人を尋問させて頂きます。証人パーシー・モーラー氏を!

第二の廷吏の声が聞こえる。

第二の廷吏の声 証人パーシー・モーラー入廷! 証人パーシー・モーラー入廷!

パーシー・モーラーが足早に入ってくる。典型的な旅芸人の服装である。

モーラー こんちは、んちは、んにちは!

バートレット …あなたはパーシー・モーラー氏ですね?

モーラー そのとおり、そのとおりっ!

バートレット あなたはある所在地不定企業の経営者ですね?

モーラー そうでーす。

バートレット つまりドサまわりの芸人ですね?

モーラー そう、そう、そうっ!

バートレット ご結婚なさっていますか?

モーラー してますしてます!奥さんつき!

バートレット それではあなたの奥方はどのような方か、ご自分のお言葉で説明して下さらないでしょうか。

モーラー 奥さん、ぼくの奥さん、とってもデブ。とってもデブ。道歩いているのを見てごらん、まるで犬五匹と中でケンカしてる麻袋みたいだよ。ぼくの奥さん、袋詰めの五匹の犬。ご清聴どうもありがとっ!

バートレット ありがとうございます。それではお訊ねしますが、ごく最近あなたの奥方は西インド諸島を訪問なさいませんでしたか?

モーラー したよっ!

バートレット それはジャマイカですね?

弁護士立ち上がる。

弁護士 異議ありっ!

バートレット 失礼しました。質問を撤回します。モーラーさん、…あなたと奥様とが初めてお会いになったのはある回転ドアの中でしたか?

モーラー うんにゃ、あの娘が向こうから会いにやって来たんだよ、どうもっ!

バートレット そうじゃなくて! いいですかモーラーさん、質問をよくお聞きになってください。あなたと奥様とはある回転ドアの中で初めてお会いになりましたね?

モーラー ああそうだった、ぼくらは以来ずっとアタマぐるぐるなんだよっ。

バートレット モーラーさん、あなたの義理の母上は禿頭でいらっしゃるとか。

モーラー そうだよ。

バートレット それではこう申し上げてよろしいでしょ…

弁護士再び立ち上がる。

弁護士 異議ありっ! これ以上本件に無関係な質問はしないで頂きたい。

バートレット しませんとも。 …モーラーさん、あなたの義理の母親は…

弁護士 異議ありっ!

バートレット あなたの義理の母親が…

弁護士 異議ありいっ!

バートレット 判事閣下、私は異議に異議を唱えますっ! わが学友マルトラヴァー君はこの法廷を侮辱しています。さらに指摘させて頂けるならば、しきたり上そう呼んではいるものの、わが学友は学んでもいないし私の友人などでもありません。よって判事閣下の許可を得られるならば今後、私はかの弁護士諸子をわが低能の天敵と呼ばせて頂きたく存じます。さて、もしわが低能天敵君が賛同して下さるならば、私はこの尋問にきちんと片をつけさせて頂きたい。

判事 何を片づけるんだって?

バートレット そろそろ閣下ご自身がお片づきくださる頃合いのようです。

判事がポケットから時計を出して時間を見る。

バートレット モーラーさん、その禿頭の義理の母上は最近何をなさいましたか?

モーラー 狼のね刺青入れたんだよ頭にね、遠目に大っきな髪に見えるようにね。

バートレット ありがとうございます。

モーラー 狼ちゃんだよ、オ、オ、カ…

バートレット ありがとうございますモーラーさん。そしてあなたはかのダチョウが窓から飛翔せんとしアイスクリームの屋台に墜落して、その結果アイスクリームの飛沫が、その時点でスキップしつつ通行中の原告かつ小人のシドニー・ボトル氏に降りかかるのを目撃しましたか?

モーラー しましたよっ!

バートレット 判事閣下、以上で尋問を終わります。

バートレット着席する。弁護士立ち上がり、手元の書類を見る。

弁護士 私は二点だけ質問させて頂きたく存じます。モーラーさん…

モーラー こんちは、んちは、んにちは!

弁護士 あなたの家に庭はありますか?

モーラー うんにゃ、ぼくんちに庭はないよっ、ぼくんち庭ないっ!

弁護士 あそこにいる被告が見えますか?

モーラー うん、うん、うんうんうんうんうんっ。

弁護士 あの被告の家に庭はあるでしょうか?

モーラー うんにゃ、被告、被告んち庭にはないよ、ないない。

弁護士 もしそうならば、被告はひょっとしたら… スコップを所有していますか?

モーラー いんや。

弁護士 草刈り鎌は?

モーラー いんや。

弁護士 熊手は?

モーラー いんや。

弁護士 移植鏝は?

モーラー いんや。

弁護士 鋤は?

モーラー いんや。

弁護士 枝切り鋏は?

モーラー いんや。

弁護士 散水缶は?

モーラー あるよっ!

弁護士 くそっ惜しいっ。反対尋問を終わります。

判事 モーラーさん、これで退廷してよろしい。

モーラー ご親切にどうも判事さん。でもその前に一曲昔のステキなバラード歌ってもいいかな、題は『あの娘は農家の女の子、なんだけど…』。

判事 聞きたくありません。どうか速やかに退廷なさってください。

モーラー (がっかりして)わかりました。

モーラー退廷する。検事が立ち上がる。

バートレット アーノルド・フィッチ氏を証人席へ。

第二の廷吏の声が遠くから聞こえる。

第二の廷吏の声 アーノルド・フィッチ入廷! アーノルド・フィッチ入廷!

アーノルド・フィッチが証言台に立つ。

バートレット あなたはアーノルド・フィッチ氏、別名…

ふたたび第二の廷吏の声が聞こえる。

第二の廷吏の声 アーノルド・フィッチ入廷!

声のエコーが消えるまで間。

バートレット あなたはアーノルド・フィッチ氏、別名…

また第二の廷吏の声が聞こえる。

第二の廷吏の声 アーノルド・フィッチ入廷!

長い間。

バートレット あなたは…

またしても、妙な音程で叫ぶような第二の廷吏の声が聞こえる。

第二の廷吏の声 アーノルド・フィッチぃぃっ!

バートレット法廷から出ていく。

第二の廷吏の声 にゅう… てえいぃ…

第二の廷吏の声が首を絞められたような悲痛な叫びで消える。バートレットが手をハンカチで拭きながら戻ってきて、被告に向き直る。

バートレット あなたはアーノルド・フィッチ氏、またの名をアーノルド・フィッチ氏ですね?

フィッチ そうです。

バートレット …何故あなたの別名は本名と同じ名前なのですか?

フィッチ 何故ならば、別名と名乗っていれば本名もそうだとは誰も思わないからです。

バートレット なるほど。お仕事は会社の経営ですね?

フィッチ そのとおりです。

バートレット あなたは散水缶を投げつけましたか?

フィッチ いいえ。

バートレット 散水缶を投げつけたとおっしゃるのですか。

フィッチ 違います。

バートレット こう言い換えてみましょう、あなたは散水缶を投げつけたのだと。

フィッチ 投げてません。

バートレット では散水缶を投げつけたのですね?

フィッチ そんなことはしてないっ。

バートレット 一体あなたは散水缶を投げたんですか、それとも投げつけていないんですかっ?

フィッチ 投げつけてませんっ!

バートレット 私はお尋ねしているんですっ。したんですかしてないんですかっ? あなたは散水缶を投げましたかっ?

フィッチ 投げてなんかいないっ!

バートレット 質問に答えなさいっ!

フィッチ 私は散水缶を投げていないっ!

バートレット おや、否定なさるのですね! 上出来です! では、あなたは散水缶を投げようと思ったかもしれない、と申し上げたら、それはひどく間違っているでしょうか?

間。

フィッチ …そのとおりです。

バートレット つまり散水缶を投げなかったことを否定するのですね?

フィッチ そうです。

バートレット (勝ち誇って)引っ掛かったなっ!

フィッチ ちっ違うっ!

バートレット よろしいフィッチさん。では、あなたの言葉が真実ではないということを否定すると虚偽を申し立てたと確認したことが誤りであると否認したかどうかということに関し事実を述べなかったということが本当であると申し上げてよろしいのですね?

フィッチ えー…

バートレット ためらっていらっしゃいますねフィッチさん! どうぞお答えを! 法廷中が待っています! わはははは! わーははははは!

フィッチ そのとおりです。

バートレット ちっ。質問を終わります。

弁護士 証拠品「A」を搬入してください!

年寄りの廷吏が入ってくる。ひどく高齢で判事よりも老人のように見える。足どりも覚束ない。証拠品である、古い赤ん坊用の浴槽を証拠品台に置くのにおよそ20分間かかる。永遠とも思える時間が過ぎたのち、廷吏はよろめきつつ出ていく。

弁護士 フィッチさん、これを見たことがありますか?

フィッチ いいえ。

弁護士着席し、かの前世紀の遺物のような廷吏が無限の時間をかけ証拠品を撤収し、退廷する。すると被告が突然何かを思い出す。

フィッチ いやちょっと待ってください!

人々驚く。間。廷吏ふたたび入廷し、努力している様子を見せながらほんの少しだけ早い動きで浴槽を置く。

弁護士 (苛立ちつつ)フィッチさん、くり返します… これを以前見たことがありますか?

フィッチ (明るく)はい。ついさっきあの廷吏さんがそこに置いてくれました。

人々驚愕。法廷中騒然。その中でなんとか浴槽がふたたび引きあげられる。検事が立ち上がる。

バートレット シドニー・ボトル被告を …一度だけ呼び出して下さい!

第二の廷吏の声 (遠くから苦しげに)シドニー・ボトル被告… 一度だけ入廷!

長い間。証言者席には誰も現われない。検事は手元の書類をめくり、誰もいない証言者席に向き直る。

バートレット あなたはシドニー・ボトル氏ですね。会社を経営していらっしゃる。そして小人でもいらっしゃると。さてボトルさん、どうかご自分の言葉で、7月14日の夜に何が起こったのか説明して下さいませんか。

検事は空っぽの証言者席を見つめる。そして困惑しあたりを見回す。

バートレット (叫ぶ)ボトルさん? ボトルさんっ?

突然証言者席の柵ごしに小さな手が現われ懸命に合図を送る。検事それを指さす。

バートレット ああ、あそこにいらっしゃいました。閣下、陪審員の便宜のためにもボトル氏に何か踏み台を差しあげてよろしいでしょうか?

判事 是非そうしなさい。

老衰の廷吏が箱を持ちふたたびよろよろ入廷してくる。ひと悶着の後、小さな手が証言者席から片方ずつ現われ柵につかまる。そしてボトル氏の顔が現われる。とても陽気である。

バートレット ああボトルさん。では…

しかしボトル氏は台からころげ落ち視界から消える。やがて苦しそうに這い上ってきてふたたび顔を現す。

バートレット ようこそお戻りを。お会いできて嬉しい。さてどうかご自分のお言葉でご説明下さらないでしょうか、その問題の夜にあなたはどの程度… 泥酔していましたか?

ボトル えっ?

バートレット ほらほらボトルさん、まさかシラフだったなんておっしゃらないでしょうね? わたしはここに署名入りの供述調書を持っています。それによるとこうなっていますボトルさん、あなたはあの夜にジンを少なく見積もっても117杯摂取していたと!

ボトル大声で抗議を始める。検事は尋問を続けようとするがボトルはさらに声を上げ法廷全体を巻きこみ大騒ぎになる。判事が合図するとヘルメットと警棒で武装した小人の警備員が入ってきて証言者席のボトル氏を外に連れ出す。全体の騒動と混乱激しくなり、判事が立ち上がり自分の椅子をつかみ引っくり返したとき最高潮に達する。椅子の裏には:「昼食」。

 

 


Source: The Golden Skits of Wing-Commander Muriel Volestrangler FRHS & Bar: Methuen, 1984